総支配人コラム

2014.09.23

ある日のタクシーにて

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先日、深夜の雨の中、急いでタクシーを捕まえたいと路肩で待っていました。
こういう時はなぜか反対車線のタクシーばかりが目に入り・・・少々イライラしていると、スッと目の前に1台のタクシーが止まりました。
不思議な気持ちでタクシーに乗り込む私を見て運転手さんが笑顔で一言「反対車線で見かけて、タクシーかなーと思って」と。

すごい!!
ノリのきいた白いワイシャツにワイン色のベスト。
白髪の上に緑のベレーを斜めにのせて何とも紳士的な雰囲気のAさん。
急いで御礼をお伝えすると、「いえいえ、こうやって約半世紀、運転手をしてきましたから」と。
Aさんは今の個人タクシーを始めるまではタクシー会社に勤務。売上は毎月ほぼトップ。
私は思わず「コツがあるんですか?」と聞いてみました。
Aさんは笑いながら「人間関係ですよ。昔の同僚達と稼ぐコツを披露し合うんです」と。
Aさん曰く、運転手を始めた当初は一人で仕事をしている感覚だったとか。
でもある時久しぶりに元同僚と再会。
別々の会社で働くようになってもそこは元々親しかった運転手仲間、会話は弾みすぐに最近の”稼ぐコツ”の披露が始まったそうです。
Aさんは「一緒に働いていた時は何とも思わなかったが、離れていた時間があったからこそお互い違う経験が出来て刺激になった」と。
それからAさんはなるべく違う会社の運転手と話す機会を持ち、”コツ”を仕入れては試してみることを繰り返したそうです。

マネジメントスキルに関するある研究で、企業の管理職200人以上を被験者として、「”少なくとも3年間休眠状態にある”相手に突然連絡をして、今の仕事についてのアドバイスを求める」という実験を試みました。
実験の結果、「休眠状態のつながりからもらったアドバイスの方が、現在進行形のつながりからもらったものよりも価値があった」というものでした。
その理由のひとつとして「音信不通だった間に、それぞれが新しいアイデアや、ものの見方にさらされていたために、休眠状態のつながりの方が、より多くの新しい情報をもたらすから」という分析がされていました。

Aさんは私に、久しく連絡をとっていない人間関係も自分自身にとっては大切な財産であることを気づかせてくれました。
実はAさん、この日がタクシー人生最後の日でした。
「今日でこの仕事は最後にしようと思います。貴女を最後のお客様にします」と言われました。
「次は何を?」と伺うと一瞬間があって、「小説家です」と。
今度は本でお会い出来ますように。
本当に素敵な方でした。

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